前回の「ロングトーンやればやるほど下手になる人がいる説」(後編)まででは、
・息の使い方にはタイプがあるのではないか
・そのうちの「放つ系」は、ようかん型のロングトーンが苦手なのではないか
・逆に、「保つ系」はようかん型のロングトーンが得意なのではないか
という仮説を紹介してきました。
そこまでお読みになった放つ系の皆さんは
「保つ系の人は簡単にロングトーンができていいなあ」
と思っていらっしゃるかもしれません。が、しかし、保つ系にはまた違うところで苦労があるのです。
というわけで、今回は保つ系の苦手とするパターンとその対策を紹介してみようと思います。
まず、保つ系の弱点としては、
・減衰型のロングトーン(デクレッシェンド)が苦手
・いわゆる「後押し」になりやすい
・歌い込むとテンポが遅くなりやすい(音楽が重くなりやすい)
・速いテンポの曲が苦手
・音価より長く吹きがち
などがあげられるかと思います。
私自身は保つ系ですが、自分が高校一年生のときに演奏したモーツァルトのホルン協奏曲の録音を聴いてみると、後押しはひどいし、軽やかさのかけらもない演奏になっていました。
では、その弱点はどうやって解消していけばよいのでしょうか?
大学在学中のホルンのレッスンで、このようなことがありました。
ハイドンのオーケストラ作品のホルンパートを教授にみていただいときに、
「古典派の作品では、減衰型のロングトーンが基本だよ。君はそれがまだできていないみたいだから、こういう練習をやってごらん」
と言われ、紹介されたのが次の練習法でした。
1拍=60bpm程度のテンポで、
・まずは、f で任意の音を8拍ロングトーン(この時点ではようかん型でよい)
→8拍かけて f から pp までデクレッシェンド
(ピッチがぶれず、余裕をもって音をコントロールできるまで練習する。以下の練習でも同様)
→はじめの4拍で f から pp までデクレッシェンド。残り4拍は pp をキープ
→はじめの3拍で f から pp までデクレッシェンド。残り5拍は pp をキープ
→はじめの2拍で f から pp までデクレッシェンド。残り6拍は pp をキープ
→はじめの1拍で f から pp までデクレッシェンド。残り7拍は pp をキープ
と、ここまでやるとあら不思議、苦手だったはずの減衰型のロングトーンができるようになっているではありませんか。音の形を自由にコントロールできる感覚です。習得までに1〜2週間程度かかった記憶はありますが、この練習により、古典派作品への苦手意識はかなり減った気がします。
さらに、これができるようになると、その応用で先述の弱点の解消にもつながっていきます。
・減衰型もできるので、気をつければ後押しにならない
・減衰型で演奏すると、音楽に軽さが出てくる
・軽く演奏できるので、テンポの速い曲も演奏しやすい
といった具合です。
放つ系の人たちからすると「そんなこと練習しなくてもできるじゃん」という感じかもしれませんが、タイプそれぞれに異なった苦手が存在し、それぞれの解決法があるのだと思います。
そして、もちろん、苦手なパターンの克服方法はこの他にも多く存在すると思います。
それでは、最後に保つ系の得意なパターンも紹しておこうと思います。
・ようかん型のロングトーン
・クレッシェンド
・テンポの遅い曲
・重厚な音楽
・シューマン、チャイコフスキー、ブルックナーなどがしっくりくる?
などがあげられるかと思います。
(これらは私個人の主観によるところも多いような気もしていますが……)
また、「その人にとって”当たり前”であることが、実は得意なこと」(自分にとってはそれが普通なので気づきにくい)ということもありますので、我々保つ系が気づいていない得意なパターンもあるかもしれません。
さて、これまで4回に渡って紹介してきました「息タイプ」ですが、次回の
にて、ひとまずひと区切りとしたいと思います。
2025年4月12日
