「息にもタイプがある」説

昨今、金管楽器のアンブシュア・タイプや生まれもっての骨格のタイプが存在するであろうことが知られはじめています。

今回は「息のタイプ」についての仮説をお話してみたいと思います。
あくまで私個人の検証やヒアリングによる仮説に過ぎませんので、「そういう可能性も有るかな、無いかな」程度にお読みいただければと思います。

昨年2023年の6月だったと思います。NHKで放送されている『クラシック音楽館』という番組の特別編を観ていたときのことです。NHK交響楽団首席トランペット奏者の菊本和昭氏が母校にて高校生のレッスンをしている様子が、放送されていました。
受講している高校生の「スラーが苦手なのですが、どうすればいいでしょうか?」という質問に対し、菊本氏が練習方法を提案し、それによって上手くできるようになっていました。その練習のまとめとして菊本氏は「実は、良いスラーとは小さなアクセントなのです」という旨の発言をしていました。それを聞いた私は反射的に「それ、違くない??」と思いました。なぜなら、今まで師匠たちからは「良いスラーは高速のグリッサンド」と習っており、自分でもその方法で上手くいっていたからです。
しかし、そこでふと「そういえば、この『スラーはグリッサンド方式』でレッスンしてきて上手くいくことも多かったけれど、あまり効果の無い生徒もそれなりの数いたような……なんなら半数くらいは上手くいっていなかったかも。そのときは伝え方の問題、受け取り方の問題かと思っていたけれど、これはもしかして息にもタイプがある……?そういえば、『4スタンス理論』の先生もタイプによって息の形が異なると言っていたしな」と思い至りました。
そこで、数日後の音大受験生のレッスンで実験をしてみました。非常に音楽性のある上手な門下生でしたが、スラーの際に雑音が入りやすいという弱点があったので、先の菊本氏のレッスンの内容を話し、「試しに、このスラーのフレーズを全部アクセント気味に音を抜く形で吹いてみて」と提案をしました。そうしたら、雑音がなくなるどころか、今まで聴いたことのなかった大音量の伸びのびとした演奏になり、本人も「こんな良い感じに吹けたことないです!私、最強です!w」と言うほど劇的な変化が起こりました。
それまで、「スラーは抜かずに音を繋げて保って」と一辺倒に指導をしてしまっていましたが、それを機に「息のタイプがある」という仮定のもと、レッスンを行うようにしてきました。
一年以上、検証とヒアリングを重ねた結果、今現在は下記の事柄に辿りついています。

・音を減衰した形、つまり「抜く」または「放つ」ように演奏した方が、良い音で且つ楽に吹ける人が一定数存在する(「放つ系」と命名)
・音をいわゆる「ようかん型」のように、キープし「保つ」ように演奏した方が、良い音で且つ楽に吹ける人が一定数存在する(「保つ系」と命名)・それぞれのタイプに得意なパターン、苦手なパターンが存在し、苦手なところには、それぞれの解決法が存在する。つまり、どちらが優れているということではなく、「工夫のしどころ」が異なる
・タイプによって、意識すると上手くいきやすい「キーワード」と、逆に意識すると上手くいかない「NGワード」が存在する
・呼気のみでなく、吸気(ブレス)にもタイプによって違いがある
・「放つ系」「保つ系」以外にも、どうやらタイプが存在しそうである

これにより、腑に落ちたことが多くあります。例えば、
・世界的な奏者や教授でも指導の内容や教える基礎練習が異なる
・プロの中でも、様々な演奏スタイルが存在する
・「これをやれば誰でも超絶上手くなる!唯一無二の教則本の決定版!」のような教則本が存在しない
・今まで自分が習ってきた先生とは「相性が良い」と感じることが多かったが、おそらく息のタイプが同じだったのでは
というようなことです。

ここまで、非常にざっくりとではありますが、「息のタイプ」についての見解を述べさせていただきました。
昨年から息のタイプが存在する前提でレッスンをする中でかなり手応えを感じているので、個人的には「ある」とは考えていますが、それでもまだまだサンプル数が少なく検証の余地がある部分も多いので、はっきり「ある」とは言えない状況です。一年後には「勘違いだった」と皆さまに陳謝しているかもしれません。引き続き、検証していまいります。

ところで、ここまでお読みになった方でこう疑問に思われた方もいらっしゃるでしょう。
「ちょっと待て、仮に『放つ系』が存在するとして、その人たちが減衰系の方が良い音がするなら、彼らはようかん型のロングトーンではベストな音色にならないということか⁉」と。
はい、そうです。いえ、正確には「『放つ系』の人たちが良い音で楽にロングトーンをするには、ある工夫が必要」と考えています。

次回のブログでは、少々センセーショナルな内容になるかもしれませんが、下記の仮説を紹介したいと思います。

「ロングトーン、やればやるほど下手になる人がいる」説

2024年10月31日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です